東京高等裁判所 昭和56年(ラ)1014号 決定
そこで検討するのに、抗告人がその主張のごとき賃借権を有することを認めるに足りる証拠は全く存しない。のみならず、民事執行法七四条一項は、売却の許可又は不許可の決定に対して執行抗告をなしうる者の範囲を「その決定により自己の権利が害される」者に制限しているものであるところ、或る賃借権が競売により消滅するものであるか或いは買受人に引き受けられるものであるかどうかは、当該賃借権が執行裁判所に備え置かれる物件明細書、現況調査報告書の各写しに記載されるかどうかとは無関係に、客観的に定まっているのであるから、仮にその記載を遺漏して売却したとしても、当該売却許可決定により賃借権者の権利が害されるいわれはなく、もともと、賃借権者は、右法条にいう売却許可決定により自己の権利が害される者に当らないと解するのが相当である。したがって、本件抗告は抗告権を有しない者のした不適法なものというべきである。
(蕪山 浅香 安国)